カテゴリー「映画・小説・ノンフィックション」の113件の記事

2017年11月24日 (金)

本当はひどかった昔の日本 大塚ひかり著 読んでよかった一冊

古典文学で知るしたたかな日本人

 

「昔は良かった」など、古き良き昔への憧れは誰しも持っていると思います。

しかしその事実は、平安時代から江戸~明治でも、今と変わらぬ問題を抱えていました。

古事記では、育児放棄、今で言うネグレクトのことも書かれていますし、捨て子やそれにともなう”捨て子ビジネス”もあったり、”口減らし”といって幼児のうちから奉公に出されることも明治まで続いていました。

五代将軍徳川綱吉の生類憐れみの政策にしても、犬や動物ばかりが有名ですが、人間の捨て子や捨て病人を禁止する政策でもあったのです。

政策として打ち出さないといけないぐらいに弱い人間は粗末に扱われていたということです。

 

また、”姨捨の伝承”もあり、60の木の股と言って、60歳になると山奥の木の股(間に)捨ててくるといった伝承もありました。”老醜”と言って、”老いてはべれば醜きぞ”と源氏物語でも書かれているほど、老人はやっかいものとして見られていました。

昔から老人介護の問題があったということです。

 

その他、いまでいうブラック企業問題も、奴隷的な存在もあったり、人身売買も遊郭に売るという一部の話しだけでなかったそうですし、現代の電車内ベビーカー論争も、昔から隣の家の夜泣きがうるさいなど、あったそうです。

余裕がある特権階級以外では子どもや妊婦、老人は食費がかかるのに労働できないというやっかい者として扱われていた節もあります。

1918年に書かれた「精神病者私宅監置の実況」という本では、精神病の半数は治療を受けることもなく、警察や自治体に届ければ座敷牢に監禁することもできたそうです。

窓のない部屋や鎖につながれていたり、入浴などもさせず、実際ひどいものだったそうです。

 

また、昔を美化することで一番多いのは、”地域の助け合い”など人とのつながりだと思うのですが、実際、日常品の貸し借りが多かったり、家族地域の絆が強いほど、自殺率が高いとのことです。

それは一度排除されると死活問題となり、”和を持って尊しとなす”の陰の方が出た結果だと思います。

 

よくいまの60代から70代ぐらいの方たちが、「昔はよかった」と言いますが、

戦争を考えてみてください。徴兵制で人を殺さないと、後ろから見方に撃たれるのですよ。

戦国時代から昭和の戦争も、敵前逃亡する兵士を殺す役目の兵士がいました。

 

姑が勝手に離縁することもあったし、結婚の相手も自由に決められず、家同士の政略結婚や姑が勝手に離縁させることもあったのです。

ちなみに死別ではない離婚率は今より高かったし、17世紀ぐらいまで特権階級しか結婚できなかったのです。

 

それに比べて今の日本は良いですよ。徴兵制もなければ恋愛も結婚も自由です。

本書を読めば、今の日本社会は昔に比べるとはるかに良いということがわかってきます。

 

昔は良かったというのは、良い家族に、”自分は恵まれていたのだ”ということなのではないでしょうか。

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2017年11月17日 (金)

「死ぬ気まんまん」と「老嬢は今日も上機嫌」エッセイ

      

佐野ようこさんのエッセイは面白い。

 

本書の執筆中、佐野さんはすでにガンの再発の告知を受けて余命二年と医師から言われていたのですが、(実際はもっと生きられました)死をすでに受け入れていられるようでもあります。

 

p203 人生に目的を持ったら、一生は短く時間はたりないだろう。目的を持たなかったら、一生は実に時間があまって長い。

 

つまり目的を持った人は死ぬときやり残したことを無念に思い、だらだら生きていたら、死ぬとき、あーやれやれたっぷり生きたなあと思える。というのです。

 

いや~ こんな死生観って斬新だな~。

さすが独善的専業作家。文章力抜群なんですよね。

   

老嬢は今日も上機嫌 吉行和子著

女優の吉行和子さんのテンポのいいエッセイ集。

お母さんのあぐりさんや、兄の吉行淳之介さんのこと、芝居や本の話しなどを、思い出深い日記を読んでいるようでした。

軽い感じのエッセイが多いのですが、中には、P134 「憂鬱な日々」では、イラクで人質になった5人が、無事に戻ってきたときの日本人やマスコミの反応と、ヨン様来日のフィーバーぶりと、第二次世界大戦時の日本人の気質に対して、怒りと、憂いと、心配な気持ちを素直に話されていました。

なんとなく読んでみるのにちょうどいい本でした。  

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2017年11月10日 (金)

「最期 」著者は必殺仕事人

    

著者の藤田まことさんは、私が好きな俳優ベスト3に入ります。

 

子どものころに見た必殺仕事人の藤田氏が演じた中村主水なんかたまらなく好きで毎週見ていたし、はぐれ刑事の安浦さん。剣客商売の秋山小兵衛。

 

どれもこれも藤田ワールドの演技力。

大人になってからもたびたびレンタルショップで借りて見ています。

 

あまりテレビのトーク番組には出演されなかったのは、ファンに夢を売る仕事だからと本書でおっしゃっていました。

 

やっぱりプロの俳優さんは意識が高いんですよね。

 

子どもの頃から下積み経験、数十億円の大借金問題まで、苦労されているはずなのにあっけらかんとした話し口調で、さすが必殺の中村さんはつかみどころがありません。

 

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2017年11月 3日 (金)

「ネットいじめ」 荻上チキ著

 
 

 

 

インターネットは匿名ゆえに陰湿なイジメの温床となるとし、ネットやケータイの使用規制が叫ばれています。

 

私も、子を持つ親として、考えておかなければいけない問題だなと、感じています。

 

著者によると、ネットの悪い方の情報ばかりがメディアで伝えられているので、闇雲に規制、禁止するのではなく、「学校裏サイト」や掲示板などについて親もよく知ることが大切だと訴えています。

 

P175 ネットいじめについても、「弱いやつ」に次々とストレスがぶつけられる「教室」と変わらない風景だと言う。

 

だから著者は、ネットを使わせなければよい。といった考えではなんの解決にもならない。学習機会や自由を奪うことになるだけ。と言う。

 

 

正直、本書を読んで気持ちがスッキリするどころか、ますますよくわからなくなったけど、ネットのことを知らなくて必要以上に怖がるより、知ることによって対処を考える方が建設的で、良いと思います。

 

その足がかりとなる一冊になりました。

 

 

 

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2017年10月20日 (金)

この世の掟をぶち破れ!櫻井章一著

p63 ~私は過去を振り返る。反省するということもない。

過去を反省したところでその時に間に合っていなかったからだ。

~では、今を大事にすればいいのか~。

今にこだわったら過去や未来に囚われている状態と変わらない。大事なのは今も「だいたい」の感覚でいること。

 

p76 勝ち続けることは人生のバランスを崩す。攻撃という本能がなくならない。

経済を豊かに(勝つ)、結果的には自然破壊。自分の首をしめる。

p89 子どもの躾に対して ~ 叱るという行為に現れる攻撃性に気づく。しつけも形を変えた攻撃。~自分の攻撃力がどう出ているかということを自覚。

著者がいうことがよくわかります。

私も子どもに必要以上に叱ることがあるので忘れないようにしたいと思います。

櫻井氏は負けなしの元賭けマージャンのプロ。

修羅場をくぐってきた方の人生論はおもしろい。

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2017年9月29日 (金)

プリシラ

基本的にロードムービー系の映画は好きです。

 

3人の女装のゲイが、オーストラリアのシドニーから自家用車バスで、砂漠の真ん中にあるリゾートでショー出演をするためにバスで旅に出た内容です。

 

旅の途中、毒舌の喧嘩が始まったり、遭難しそうになったりの珍道中。

 

小さな田舎街ではゲイに対する偏見で、ひどい目に遭う3人。

しかしめげることなくなんとか目的を達成して、自分たちの居場所だったシドニーに帰っていくのです。

映画の中の音楽と、オーストラリアの砂漠と、俳優の演技力が合わさったディス・イズ・映画。

 

少し勇気をもらえました。

 

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2017年9月22日 (金)

将棋の子

 
私も4歳の頃父親に将棋を教えてもらってから兄とよく指しました。
私が子供の頃はなだゲーム機も珍しく、将棋が流行っていました。

授業中、テストが早く終わった生徒がいたら、先生が児童を誘って将棋を指すのですから大らかな時代でもありました。

 

「奨励会」そこは将棋の天才少年達がプロ棋士を目指してあつまる場所。

 

奨励会で26歳まで4段になっていないと退会といって将棋のプロを諦めなけねばならないのです。

 

神童と言われ、将棋ばかりをひたすらやって来た子供にとって退会は自分をこの世から否定されるぐらい厳しい現実です。

そこに悲しみのドラマが生まれ、最チャレンジのドラマも生まれるのです。

 

著者は将棋雑誌の元編集長。

奨励会の、悲しみのドラマを間近で見てきた人です。

 

青春のすべてを賭けてきた天才少年たちに待ちかまえていた途方もない挫折と、その後の再会。

心温まる一冊でした。

 

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2017年9月15日 (金)

フィツカラルド

映画の妄想に取りつかれたい。

 

そんな映画をいつも心待ちにしているのですが、この映画は久々のホームランでした。

 

19世紀末のペルー。

アマゾン川の上流にオペラハウスを建設しようと妄想に取りつかれた男フィツカラルドが、巨大な蒸気船で河を上り、山を越えるのですから、壮大な映画です。

 

映画の撮影もCGやデジタル技術のない時代です。

実際に船を山に登らせて撮ったわけですから映画の内容も撮影自体も狂気に取りつかれた男たちのドラマと言っても過言ではありません。

 

監督は、ドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク。

フィツカラルドを演じるのは、クラウス・キンスキー。

 

現実から逃避したい。

そんな気持ちになっているときに見るとはまります。

 

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2017年8月25日 (金)

仕掛け人 藤枝梅安

       

江戸時代、金をもらって悪い奴らを人知れず闇に葬る仕掛け人の生き様を描いた時代小説です。

 

著者の池波正太郎氏と言えば、“鬼平シリーズ”や“剣客商売シリーズ“などたくさん出していますが、本書の仕掛け人シリーズは数が少ない。

著者自身に言わせれば「金をもらって人殺しをする話は、そうたくさんは書けない・・・」

それだけに仕掛け人シリーズは読み手にもその緊張感が伝わってきます。

 

善悪は表裏一体といった哲学が小説全体を覆い、読み終えると、人を見る視野がひろがったような気になります。

 

また小説の本筋には関係なく、江戸時代に食べたと思われる料理が登場するので、ちょうど本筋の緊張感の箸休めとなり、全体の味を深めてくれました。

 

池波小説は裏切らない。

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2017年8月18日 (金)

だめんず症候群 倉田真弓著

        

本書は、ダメ男にはまってしまう女性への処方箋。

 

暴力男やひも、ストーカー、ダメ恋愛にみる症例、その予防と応急処置、脱却への方法がまとめられています。

 

男の私が本書を読んだ理由は、以前テレビで著者の倉田さんが、新しい旦那?さんと出演されていて、その旦那さんは映画の監督もしたことがある方で、借金が何億円かあって、女性と600人と交際経験があるとのことです。

 

それを司会の真壁かをりさんが、

「私だったら、最初から借金が何億円もある人とは結婚しない」

「この映画を見てくれる人がいると思ったのですか?」

「彼がダメ男じゃないですか!」

と、ツッコミをどんどんいれてくるのですね。

それを著者の倉田さんがムキになって反論する姿が印象的で面白かったからです。

 

自分の過去の経験を元にして、「ダメ男には気を付けよう!」といった警告本を出しといて、「アンタはまだ凝りてないね」といったツッコミ。

人間て、つくづくおもしろいと思います。

P11 「ダメ男」とは「本当は惚れていない男」のこと。そして「ダメ恋愛」とは「本当は惚れてもいない男との満たされない不毛な愛のこと」

経験者の言葉は重いということです。

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